エッチング (Etching-glass)
エッチングとはすりガラスのような加工を施す技法です。
加工させないガラス部をワックス等でカバーし、次に“フッ化水素酸”などを使ってカバーされていないガラス表面部分を溶かします。
カバーされた部分は素通しガラスのまま残り、カバーされなかった部分は半透明な表面へと装飾されます。
酸性液で表面を浸蝕させる技法が開発されたのは1771年のことですが、実用化されるのは1855年にケスラーがフッ素水素酸による加工法を確立してからになります。
蛍石の粉末を硫酸に混ぜると、ガラスを腐食する不思議な薬液(フッ化水素酸)が得られることは発見されていましたが、薬液の製法は一般には秘密にされていました。
秘密であった製法は19世紀には公開され、以後に多くのガラス工芸で用いられることになっていきました。
しかし、廃液の処理や有毒ガスの発生など手間と危険性を併せもつ手法でもありました。
エッチングによる装飾は大きく2つに分けることができます。
1つめは、広範囲な「面処理」をするもので、それはガラス器全体に及ぶこともあります。
侵蝕度をコントロールすることで艶消しや粉吹きなどの様々な効果を得ることができます。
2つめは、「線刻」です。
まずガラス器全体を蝋とテレピン油またはワックスなどで覆い保護膜を作ります。
次に、針ペンなどを使ってその保護膜にモチーフをデッサンします。
その後に酸性液に対象ガラスを浸すと、保護膜の削られた部分だけが侵蝕される仕組みです。
他のカット技法などに比べて複雑な模様を描きやすいので、幾何学模様や人物や風景などの図柄模様の装飾に効果を発揮しました。
立体的彫刻による繊細な絵画的表現までもが可能です。
エッチング技法の施されたガラスの最大の魅力は、その柔らかな光です。
浮かび上がる幻想的なガラスの質感は、独創性に富んだ空間を演出してくれるでしょう。